物体が、重いほど速く落ちる理由

雑学
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物は質量(重さ)に比例して、落下速度が速くなる。

当たり前すぎる事実だ。もちろん、真っ赤な嘘である。

このことに最初に触れたのは、ご周知の通り、かの有名なアリストテレスである。しかし、この説はそれから2000年近く経ってからようやく否定された。ガリレオがピサの斜塔から落下実験を行ったのは有名すぎるくらいだ。

では、なぜアリストテレスともあろう人がこんな簡単なことを間違えたのか?これを気にする人はやたら好奇心の強い変人くらいだろう。ただ、最近その間違いの原因(と、推測されている仮説)を見つけたので、今回はそれについて記す。

アリストテレスのミステイク

なぜ、間違えたのか。

結論から言おう。アリストテレスは落下実験を「水中で」行ったのである。

水中?怪訝に思われるかもしれない。もう一度強調しておくと、これはあくまで「仮説」である。ただ、空気中で落下実験を行うとなると、落下速度が速すぎる。当時の技術では実験の正確性に悖ってしまう。だから、より抵抗の大きな水中をわざわざ選んでモデル実験を行ったのではないか。

もしそうだとしたら、アリストテレスに間違いはないのである。水中で物体が落下するときの終端速度(浮力と重力が釣り合い、落下速度がそれ以上変化しなくなるときの速度)は、「物体の質量に比例する」。彼に間違いがあったとしたら、それは実験のモデルとして水を選んだことに他ならない。(ちなみに、僕も水中での物の落下について気になった。だから公式について調べてみたのだが、ストークスの式?やら、レイノルズ数?やらでちんぷんかんぷんだったので、気になる方はご自身で調べていただきたい。)

さらに余計な情報だが、NASAは空気抵抗が無ければ落下速度は「質量に比例しない」ことを、羽とボウリング球を用いた実験で示した。下がその動画だ。

また、僕は最初にこう述べた。「ピサの斜塔からガリレオが落下実験を行った。」

嘘である。ガリレオがピサの斜塔で落下実験を行った、という有名な逸話は、あくまで伝説に過ぎない。その伝説は根拠にかける。また、そもそもガリレオ以前の科学者が、すでに落下速度と質量が無関係であることを示していた。

これらの一連の物語は、単なる雑学に過ぎない。が、非常に示唆に富む内容でもあると思う。アリストテレスが間違えたのは、そもそも「重さと速度が比例する」という前提で考えていたからかもしれない。そしてその間違いが、長らく常識として受け入れられてきたのも、基礎実験を蔑ろにする現代の科学の課題と通じるものがある。(一例として、スタンフォード監獄実験はでっち上げだったとも言われている。僕も詳しくは知らないのだが、詳しくはScience Fictionと言う本で述べられている。気になる方はぜひ。)ガリレオの逸話も同じだ。伝説ばかりが一人歩き。昔も今も、「常識」と「フィクション」は紙一重なのだなぁ、と感じた。

以上、落下現象に関する話だった。君子の皆(!?)、データの捏造はダメだぞ?

追記 ー重力についてー

ついでに何で重いものと軽いものの落下速度が同じなのかについて、説明を加えておく。確かに、重いものにはより大きな力が働いている。力とは、物体の速度を加速(または減速)させるものだ。だから、重い物の方が加速度が大きい、つまり重い物は速く落ちてもいいはずだ。

しかしそうではない。なぜなら重い物の方が「動きにくい」からだ。これは直感的に理解できるかと思う。ボウリング球を動かそうと思ったなら大変だ。対して、同じ大きさのキャンディーボールなら、少しの力で吹っ飛んでくだろう。

つまりどういうことか。重い物は、重力により大きな力を受けるが、その分動きにくくなっているのである。(僕が以前読んだ本では、動きにくさのことを「慣性質量」、重さによる引力の受けやすさを「重力質量」と呼んでいた)。だから同時に着地する、というわけだ。

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