【MV考察】ヨルシカ「晴る」

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 ヨルシカの「晴る」のMVがいまさっき公開されたので、それについての考察をしていきます!
ヨルシカは神!!(癒着なし)

(最初に断っておくと、考察でまだまだ見落としているところがあったり、解釈違いがあったりするかもしれません。ぜひ、先に曲をお聴きください!)

 全体的には、晴れ⇒雨⇒晴れという感じで、少年が逆境を乗り越えていくという展開になっていて、穏やかな気持ちで聞ける素晴らしい曲です。

 また、この曲が主題歌となった葬送のフリーレンの、死者を惜しむという要素が強いので、雰囲気があっていいですね。

(追記 2024/9/15:10000PVを遂に突破!ありがとうございます!!)

まず結論

 登場人物は2人、おじさんと子供です。この2人はどんな関係なのか?

 僕の考察の結論から言おう。

「おじさんはもう亡くなっていて、子がその死を受け入れて立ち直っていく」、これがストーリーの流れだと思う。

おじさんと少年の関係

 おじさんと子供はいったい何者なのか?

 サムネや、寝ている子供を撫でていること、子供を担いでいるシーンなどから、おじさんは子供の父親だと推測できる。

そして、そのおじさんは既に亡くなっている。こう判断できる根拠は何か?

 一番わかりやすいのは2サビの、おじさんが水面を覗くシーンでしょう。子供は水面に映っているのに、覗き込むおじさん自身の影は見えない。おじさんはその事実に気づき、目を見開く。
 次に冒頭の情景描写、子供が寝ているシーンから。このとき、子供は夕日の差し込む日向で寝ています。しかし、おじさんが座っているところは影だ。影が死の象徴。
 おじさんの、ずっと汚れたままで変化しない服装も、死者のシンボルだ。

だから、おじさんは既に亡くなり、子の成長を見守る幽霊のような存在になってしまったと考えるのが妥当でしょう。

なぜ子供は泣いているのか?

 2番のサビのところで、少年は雨の中で泣いている。なぜか?

 お察しの通り、「父の死」だ。
 先ほど述べた理由もさることながら、他にもいくつかの根拠がある。まずは、おじさんの帽子。ずっとおじさんの被っていたペレー帽が、地面に掘った穴にさし置かれているシーンがある。ここが1番のサビで掘られていた穴だ。最後に手紙を添えられ、土が盛られて「墓」になるのはご周知のとおり。

 おじさんは泣いている子供を励まそうとしますが、それもおじさんが亡霊であるために声が届かない、悲しいシーンでもある。

 じゃあ、なぜおじさんは亡くなったのか?

 まだ確信を得てはいませんが、「戦争」の影響かもしれない、と考えている。1番の終わりに通りすぎた飛行機。クワッドジェットと呼ばれる4発ジェット飛行機だ。高出力であり、旅客機や貨物機の他、軍用機に使われています。コストは大きいが、得られる推力が大きいため爆撃機によく使われていたそう。
 また、その飛行機が通りすぎたあとに、眼下に広がる街が煙っています。もちろん、単に水蒸気が冷やされてできた湯気(水滴)と考えることもできる。ただ、もし飛行機が爆撃機だったとしたら街が破壊された後の煙、ということになる。
 これに関してはどっちかの判別がつかなかったため、判断は保留しておこう。

「雨」と「晴る」と「春」

 次に、この曲のタイトルでもある「晴る」について。

 この曲のストーリーには気象条件が大きく関わっている。

 気象について、まず最初から。1番は夕日、2番は雨、回想シーンを経て、ラストは晴れで終わります。これがこの曲の希望だ。
 もちろん、天気は少年の心情をストレートに表している。
 1番は晴れていますが、夕日だ。この後に夜(不吉な現象)がやってくる前の、嵐の前の静けさと取っていいでしょう。2番の雨は言うまでもなく、少年の泣いている心情(”泣きに泣け、空よ泣け 泣いて雨のせい”のところ)を表している。
 その後に、おじさんが少年を担いで歩いているシーンがあるが、これは実際におじさんが生きていた頃の状況の回想だ(冒頭部分もこの回想)。ここで、空は晴れわたっている。しかし、時間軸を戻してみると、今、少年のうえには雨雲が広がっている。この現実と思い出の乖離が悲しい…。
 空想の後の最後の部分では、もう父親は出てこない代わりに少年が1番のシーンと同じように寝ています。全ては夢だったのだろうか?父の霊が出てこないのは、それが少年の夢にすぎなかったからか、はたまた子を見届けて成仏したからなのか。前者の方がしっくり来るな~、と僕は思っていますが、ここは解釈の自由でしょう。

 最後のシーンでは、手紙を形見の帽子のうえにそっと置いている。この手紙は、少年が雨の室内で書いていたもので、父への想いをつづったものなのだろう。そうして気持ちの整理がついた少年が青空を振り仰ぎ、希望とともに曲が終わるのだ。

 いや~、良い。

 晴れや雨は子供の心情の変化のシンボルだ。さらに、影にいる父と少年の対比から、「晴る」が「春」につながり、生命力を表現している。

季節の話

 この曲で季節は変化しています。子供を担いで歩く回想のシーンは、巻雲が見れるのでおそらく春。1番は、木々の葉が少し落ちているので秋または冬ではないでしょうか?2番は、時系列的に考えると冬か。ただし葉のつき具合は1番と変わるところがないので、ほぼ同時期かもしれない。2番と3番の間、”春を待つ”のあとのラスサビは紛うことなき春だ。

 だから、時間軸にそって整理すると、「秋⇒冬⇒春」という感じだ。

 さらに、最も気に留めておいてほしいことがある。歌詞が「晴る」から「春」に変わっていることに気づいただろうか?「花よ咲け」も「空よ裂け」になっている。

 「晴る」から「春」へ。「晴れ」は日ごとに変わる短いものだが、「春」は季節というより大きいスケールのものだ。これを踏まえると、最初の”晴れ”は、自分が「雨」の状況下において憂いが解決してほしいという気持ちだ。ではラスサビではどうなのか?「春」は晴れよりも長い。雨間のよう晴るよりも、より活き活きとして、安定した心の落ち着きを手にしたこと、すなわち少年が悲しい記憶と決別したことを示しているんじゃなかろうか?(もちろん、そこにはちょうど春の気候のように、定期的な雨と晴れがあるかもしれない)
 この「晴る」と「春」に関してはまだまだ考察の余地がある。少し牽強付会すぎたかもしれぬ。

 おもしろいことは、「晴る」の辞書的意味合い。

 「晴る」は古語で、①晴れ②憂いや悩みが解決する、といった2つの意味合いがありますこの曲のタイトルが「晴る」なのも、単純な語感の良さではない。古語に変換することで追加の意味合いを持たせて、「春」との掛詞にするという高度すぎるテクニックだ。(さらに言えば、ドイツ語に直すと「天国」を意味するヒンメル。「葬送のフリーレン」の作中のキャラ名だ。恐ろしや。)

この曲の好きなところ

 ここからは感想や私見も交えつつ、細かいところについて話していく。

 壁は、少年の超えるべき壁だ。雨の日、少年はこの壁のそばで泣いている。最後のシーンで墓に手紙を添え、壁とは逆方向の太陽を振り仰ぐところ。僕はこれがすごく好きだ。
 この曲のラストは、無人の壁を仰ぐようにして、その上を鳥が通り過ぎていく。自分にとってのつらかったこと・試練に別れを告げて、壁の前を立ち去る子供の姿が目に浮かぶようだ。しかし、ただ過去から目を背けたわけではない。そのうえを通り過ぎていく鳥は、少年の心だ。壁を乗り越えていく希望ととらえるとより一層おもしろい。

 あともう一つ言及したいのが、郵便受け

 何度か、少年は郵便受けをチェックする。ここも僕の空想だが、彼は亡き父への手紙を書いていた。逆に、自分のところにも父からの手紙が届くことを期待していたのだろう。もちろんそれは起こりえない。最後に、これまた無人の郵便受けが映るのも、反実仮想を退けるほど、少年の心が成長したとも考えられる。また、郵便受けは死者と生者の「ありえない」コミュニケーションを表す。そのすれ違いを思うと、すごく切ない……

まとめ

 これまでの話を簡潔にまとめよう。

 ある子は父を亡くしてしまい、「晴る」を待っていた。穴を掘り、そこに父の帽子を横たえる。雨や晴れはもちろん彼の気持ちだ。父への想いを込めた手紙を書いたりもしたが、なかなか悲しさを乗り越えられない。回想を経て少年は目を覚まし、墓に手紙を添えて壁の前から立ち去っていく。そのときにはもう季節は春で、少年が父との思い出に触れて壁を乗り越えたことを表している。

 こんなところだろうか。僕がMVでめっちゃめちゃ好きなのは、タイトルの「晴る」が3番に入る直前に表示されるところだ。もう、なんというか、感動。

 さて、では今回はこんなところで考察を終わりたいと思います!

 ヨルシカは神!!

追記:YouTubeのコメ欄から

 「晴る」がドイツ語で「天国」を意味する「ヒンメル」になることについては言及したが、動画中のMVはドイツに関連してベルリンの壁(東西冷戦下において、東側諸国と西側諸国の分断の象徴となった壁)または嘆きの壁(ユダヤ教の聖地の一つ。ドイツはユダヤ人への迫害にも関与している)ではないか、という意見があって感心した。嘆きの壁なら内陸だが、東西ドイツの国境線(ベルリンの壁とは少し違うが)なら海沿いにあってもおかしくはない。

 また、飛行機についても言及があった。航空機はドイツ空軍Fw200C輸送機というもので、西ベルリン封鎖の際に物資輸送に使われていたらしい。

 この2つを総合すると、あの壁は「ベルリンの壁」と考えるのがいいかもしれない。(1サビの終わりに壁沿いにあった荷車も納得)だとすると父はなぜ亡くなったのだろうか?壁沿いに住んでいたから、逃亡を疑われて射殺されたのだろうか?それとも、実は父は生きているが、壁の境で分断されてしまっただけなのだろうか?そうだとすると、郵便受けがたくさん出てきたのも連絡を待っていた、と解釈できる。

また有力な情報があれば追記します。

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